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コスパ的観点から日本のロースクールとアメリカのロースクールはどちらがよいか

高等教育において法律という学問分野を選択した場合、そこで勉強した結果をお金に変える(仕事を得る)方法として、次のものがあります。

 

1 大学に残り、教授職(等)を得る

2 法律家(裁判官、検察官、弁護士)になる

3 企業に雇用され、法務部社員等として働く

4 政治家、政治家の秘書になる

5 雇用、委任以外の形態(本を執筆するなど)

追記:アメリカであれば政府系機関で働いたりリサーチ機関で働いたりということも考えられると思います。

 

で、ロースクールというのは大学院であり、基本的にはアカデミックな場なのですが、日米とも、ロースクールに進学する学生のほとんどは1ではなく、2を目的にしているのが実際のところです。

 

日本で2になりたい人は、かつて「大学→司法試験→司法研修所→法曹資格」と進むのが一般的で、その後法律家となった後に日本以外のロースクール(主にアメリカかイギリス)に進学するのが一般的でした。しかし、現在は「大学→(日本の)ロースクール→司法研修所→法曹資格」と進むことになり、海外のロースクールに行きたい人は、合計2回、ロースクールに通うことになるのです。

 

そうすると、「2つもロースクールに通うのって無駄じゃね」という発想が当然出てきます。昨今、「ワープア弁護士」とか、ロースクールを卒業したけれども就職ができずに借金だげが残った、なんてこともよく言われます。一部を一般化している嫌いがあるものの、書かれていることは事実からそう遠くなかったりもします。

 

ついにはこんな意見が出てきました。

 

「日本のロースクールに行くより、直接アメリカのロースクールに行った方がコスパが良いのでは?」

 

今までは日本の法曹資格を取るなり、社会人として法務経験を積んでからロースクール留学するのが当然だったのですが、そもそも論としてそれをすっ飛ばしてロースクール留学したらよいのでは、という考え方です。

 

実際、自分の直接の知り合いでも大学卒業→即、ロースクール留学という人がいます。また、中国人留学生は、中国の大学を卒業してから職歴を挟まずにすぐアメリカのロースクールに留学している方が多いです。

 

そこで、日米ロースクール双方の比較をしてみたいと思います。

 

まず、日本のロースクール卒業までに要する期間は2年から3年で、得られる学位は法務博士(Juris Doctor)です。Doctorと名前が付いていますが、論文の審査を経て授与される「博士の学位」とは区別されています。詳しくはググってみてください。実質的には、司法試験の受験資格を得るのが目的の人が多く、要する金銭コスト(学費・生活費込み)は奨学金がなければ500万〜1000万円弱という感じでしょうか。

 

日本のロースクール

2年の時間コスト+500−1000万円の金銭コスト=司法試験受験資格

 

アメリカのロースクールは、1年コースの修士(Master of Laws 又はLL.M.)と3年コースの博士(Juris Doctor)のどちらかで異なりますが、日本の法学部卒業だと、ABA認定のロースクールのLL.M.を取得すれば、ニューヨーク州司法試験の受験資格が得られます。要する金銭コストは、自費であれば生活費込みで1000万円くらいはかかります。

 

アメリカのロースクール

1年の時間コスト+1000万円の金銭コスト=司法試験受験資格

(NY州の場合を想定。州によって受験資格は異なります)

 

これに加え、日本の場合は、司法試験合格後に1年間の司法修習を経る必要がある(昔は給与制でしたが現在は無給)という違いがあります。アメリカの場合は司法試験に合格すれば、MPRE試験など他の試験のスコアを取得しており、登録要件を満たせば、すぐに弁護士登録をすることができます。

 

おまけに、アメリカのロースクールに卒業しているということは、英語力の証明にもなります。

 

そう考えると、アメリカのロースクールの方がコスパがよいようにも思えます。

 

ただ、忘れてはならないのは需要と供給の問題です。

 

LL.M.を取ってNY州弁護士になったとしても、日本人がアメリカの法律事務所に就職するのは並大抵ではありません(というよりコネがなければノンネイティブにはほぼ無理)。なぜならば、日本語が話せるというのは売りにならないので、純粋に英語を母国語とする同業者との競争になるからです。単にアメリカ各州の弁護士資格を持っているだけであれば、そのような人はアメリカに大量にいるため、希少価値が全くないからです。

 

参考: http://americanlegalsysteminfo.blogspot.jp/2013/09/blog-post.html

 

逆に、新卒で司法試験に1回合格か短期合格すれば、日本の法律事務所への就職はそれなりに確保されているからです。例えば、日本の5大法律事務所とか、トップテンの法律事務所ということに限って言えば、昔も今もそれほど採用数は変わっていませんし、大手事務所の初任給が1000万円を軽く超えるところからスタートするというのも昔から変わりありません(大量合格を影響を受けているのは中間から下位の層の弁護士です)。大手法律事務所に入れば、ロースクール留学は事務所の経費で行くこともできます(無条件ではありませんが)。

 

そう考えると日本の司法試験を受けることにもまだ価値が残されているようにも思えます。

 

それ以前に、職歴なしでアメリカの有名ロースクールに行くのは、レジュメや推薦状などが説得的でないと難しいかもしれません。

 

個人的には、新卒年齢で腕に覚えがあるなら日本のロースクールを目指すメリットがあるけど、そうでない場合は盲目的に日本のロースクールに行くのではなく、いろいろ選択肢を考えてもよいのではないか、と思います。