【スポンサーリンク】

受任中の案件が弁護士ドットコムニュースに取り上げられました

www.bengo4.com

短いニュースでなかなか詳細が伝わらなかった部分もあり、このブログで、言い訳含め、補足を書かせて頂きたいと思います。

まず、「NEMで返せ」という主張ですが、相談者は、「今すぐ返してくれるのであれば円でもよい」とも考えています。現時点では、補償の際に採用されたレート(88.549円)よりもさらに低い、40円~60円で推移しています。補償レートで円を入金してもらい、すぐにNEMを買い付ければ利用者にとってはプラスになります。そこは言葉足らずだったなと。

仮想通貨の口座開設契約はどのような性質の契約か

何となく、今は「仮想通貨=特殊なもの」というイメージばかりが先行し、システムも特殊、契約形態も特殊、というようにみられがちだったので、その点について問題提起したかったという考えがまずありました。

仮想通貨は有体物ではないので、銀行預金のような消費寄託契約ではありません。仮想通貨の買い付けのために法定通貨を消費寄託し、その後の取引に応じて残高を管理し、取引所は、顧客の指定に応じて各通貨の出金に応じる義務(仮想通貨の場合は、顧客の指定アドレスに対する送金TXを仮想通貨ノードに対してブロードキャストする行為義務)がある、というのが正確な権利義務関係の分析となります。

そうすると、一義的には各仮想通貨の出金に応じる義務が取引所にあるのが当然ということになります。

しかし、大量に不正流出した仮想通貨を顧客の要望に応じて送金するのは、実際上はほぼ不可能です。特に、アルトコインのように流動性の低い通貨で再調達をするとなると、市場が限られるため価格が暴騰してしまいます。全ユーザーから一斉に送金依頼があった場合には、社会通念上履行不能ということになるでしょう。

(そのため、取引所の裁量により代替通貨で返金できるという規定があればベストですが、このような規定は他の取引所の規定にもないので、やむを得ないのかなと。今後盛り込まれることにはなると思います。)

履行不能になると次に出てくるのが損害賠償額の算定の問題です。ここで初めて、どのように円換算するか、という問題が出てきます。NEMの価格はハッキング後に暴落したり、値段が戻ったりしていますが、基本的に、原則は履行不能時、例外的に特別事情に基づく価格で賠償額を決めることもできる、というのが民法の通説的な考え方です。

その原則に従うと、取引所が暴落したときの価格で計算すべきという特別事情が立証できない場合は、原則として履行不能時の価格が採用されることになります。

じゃあ履行不能時はいつなのか、ハッキング直後か、顧客から一斉に出金依頼があったときか、あるいは訴状送達時ないし判決確定時か、という話になってくるのではないかと。その議論をすっ飛ばして一方的に賠償方法、賠償額を決めるのはおかしいのかなと(そもそも今回のケースは補償ではなくて賠償だと思っています)。

決済タイミングを強制されることの不都合性

残念ながら記事にはなりませんでしたが、決済タイミングを強制されると結構面倒なことになります。この点も具体的に説明したいところでした。

「取引なんだからいつかは税金を払うんだし、不都合はないだろう」とか、「どうせ儲かっているんだからいいじゃないか」という風に考えられてしまいがちです。

しかし、例えば、現在時点で600万円の含み益を有しているユーザーがいたとします。

この方が、全ての取引を本年度決済してしまうと、合計で30%の所得税(控除額や他の所得を考慮していません)が発生することになります。

他方で、仮想通貨による所得は雑所得ですので、他に雑所得がない方であれば、毎年20万円までの利益であれば確定申告は不要(無税)です。

極端な例ですが、600万円の含み益を30年に分けて少しずつ利益確定をしていく、という方法で確定申告をしないことも可能なのです。

毎年少しずつのキャッシュフローを出しながら長期ホールドして、その通貨が値上がりすればさらにフローが生まれる期間が長くなる。

全く確定申告しないというのは大げさとしても、最低税率の範囲内で少しずつ利確していくというのは当然ありうる考えなのかなと。

この不都合を金銭換算するとどうなるのか。実際上は因果関係がなく賠償請求は困難かも知れません(納税は今年しなくてもいつかするわけなので、本年度納税による出費や税理士費用が発生しても、因果関係がないか、そもそも損害でないか、と判断される可能性が高いです)。

ただ、そういう部分も今後一つづつ論点として整理していく必要があるのかなと思っています。

免責規定と消費者契約法

www.cloudsign.jp

こちらも参考になります。

利用規約に包括免責規定を設けていたからといってそれだけでリスクヘッジできるわけではないので、規約は丁寧に作るべきなのですが、サービスインするときにチャチャっと作って後で直し切れず不備が残ってしまうということもあります。

この辺は自分も日常業務で気を付けたいポイントです。